相続放棄には期限があります
相続放棄には期限があるので注意が必要
相続には、以下の期限が法律上定められています。
・相続があったことを知ったときから3ヶ月以内に相続の放棄又は限定承認をしない場合、債務も含め亡くなった方のすべての財産を相続することとなる(民法915条1項、同921条2号)
・相続があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に亡くなった方の所得税の申告手続き(準確定申告)をする必要がある(所得税法125条1項)
・相続財産の総額が基礎控除額を超える場合、相続があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に自身の相続税申告手続きをする必要がある(相続税法27条1項)
・相続人に対して民法で最低限の相続分を保証する相続割合(遺留分)が遺贈などによって侵害されている場合、相続があったこと及び遺贈などがあったことを知ったときから1年以内に請求をしない場合、遺留分について請求できなくなる(民法1042条)
相続が発生した場合、まずは【3ヶ月】以内に相続を放棄又は限定承認をするのかを決定しなければいけません。
しかし、この【3ヶ月】という期限について、そもそも期限があることを知らなかったり、期限の計算を間違えたりして、期限ギリギリになってから相談に来られる方もいるのが現状です。
相続放棄の期限はいつからはじまる?
民法915条1項によると、「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内」となっています。この3ヶ月間の期間のことを、一般的に「熟慮期間」といいます。
この期間内に相続放棄をしない場合には、原則として、プラスの財産・マイナスの財産関係なく全ての財産を相続することを承認(単純承認)したものとみなされることになります(民法921条2号)。
この3ヶ月という期間は、家庭裁判所に請求することによって伸長することもできます(民法915条1項ただし書き)。
また、極めて例外的ではありますが、相続人が、①被相続人に相続財産が一切ないと信じており、②相続財産の調査をすることが著しく困難な事情があって、③相続財産がないと信じることにつき正当な理由がある場合には、相続開始の時から3ヶ月を経過していても、相続財産の全部又は一部の存在を現実に知ったときから3ヶ月以内であれば、相続の放棄や限定承認ができるとした最高裁判所の判例があります(最高裁昭和59年4月27日判決)。
相続の放棄や限定承認をする場合、相続人が自ら手続きを行うか・弁護士に依頼するか?
相続の放棄や限定承認の手続きそのものは、「弁護士に頼まないと無理!」というほど難しいものではないため、相続人がご自身で行うということも十分に可能だと思います。
しかし、相続財産がどれだけあるのかを調査し、手続書類や必要書類をすべて揃えるのは、煩雑で面倒であるともいえます。
そこで、相続人自身で手続きを行う場合と、弁護士に依頼する場合のメリット・デメリットについて、比較しやすいよう以下にまとめてみました。
相続人が自ら相続放棄等の手続きを行うメリット・デメリット
【メリット】
・費用があまりかからない
相続財産の調査や家庭裁判所への申述に際してかかる費用など、実費はどうしてもかかります。しかし、それ以外の費用はほとんどかからないため、出費を抑えることができます。
・他人に個人情報を知られることがほとんどない
弁護士は守秘義務を負っているとはいえ、依頼者にとっては他人であるため、親族関係や財産状況などの個人情報を知られたくないと思う方もいらっしゃると思います。そのような場合には、相続人ご自身で手続きをすれば、家庭裁判所の職員以外に個人情報が知られてしまうことはほとんどないと思われます。
【デメリット】
・手続きが煩雑
近親者が亡くなってすぐに、必要書類を作成し、収集し、それを期限内に提出するというのは煩雑で面倒だと感じる人も多いと思います。また、手続方法を調べたり、家庭裁判所に相談したりしても、いまいちよくわからないという場合もあるでしょう。
・期限内に手続きを終えるのが大変
3ヶ月という期間は、思っている以上に短く、通夜や告別式などの葬儀だけでなく、家事や子育て、仕事などの日常行為が忙しいと、いつの間にか期限がせまっているということもあります。
・何かトラブルが生じた場合、対処に困る
例えば、期限直前になって必要書類を紛失してしまった場合や、急な病気・出張などによって時間が取れなくなった場合に、対処ができなくなってしまうといった危険があります。
・他の共同相続人との間で意見が割れた場合に収拾がつかなくなる場合がある
相続を限定承認する場合において、共同相続人がいる場合には、共同相続人全員が共同して限定承認を行う必要があります(民法923条)。しかし、共同相続人の間で限定承認をするかしないかの意見が割れた場合、仲立ちをするものがいないと収集がつかなくなり、結果的に期限を過ぎてしまうという危険もあります。
弁護士に依頼するメリット・デメリット
【メリット】
・煩雑な手続きを一切しなくて済む
相続財産の調査や相続放棄等の手続きなど、面倒なものは全て弁護士に任せることができます。そのため、日常生活の時間を手続きのために奪われるということは、ほとんどなくなります。
・想定外のトラブルが生じた場合でも迅速に対応できる
相続放棄等の手続きにおいて何らかのトラブルが生じたとしても、弁護士による迅速かつ的確な対応によって対処することが可能になります。
・他の共同相続人と意見が割れたときに交渉してもらえる
弁護士は日常的に相手方との交渉をしていることもあって、交渉のプロです。そのため、限定承認をすることのメリットを説明することによって共同相続人を納得させることができる可能性が、相続人自身で行うよりも高くなると思われます。
【デメリット】
・相続人自身で手続きを行うよりも費用がかかる
弁護士に仕事を任せると、報酬などの費用が発生します。そして、その報酬などの費用も決して安いものではありませんし、事案が複雑になるにしたがってどんどん費用が増えていく場合もあります。
当事務所では、そのような費用の高額化によって依頼を躊躇してしまうということを防ぐため、「相続放棄おまかせプラン」と「相続放棄サポートプラン」を用意しました。